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作品 a certain day

 女性と過ごした一日を回想する。

 一緒に行動しながら「僕」はいろいろなことを思う。その流れがものすごく自然だ。ごく短くまとまっていながらも、思考の流れていく様は十数時間分のものがある。作者が実際に経験した話であるかはわからないが、ともかくそれだけの分量の物語を作ることには成功している。意識的な物語作用が働いているのだ。
 「僕」の描写には力量がある。
 生々しい文章であるとも、リアルな文章であるとも言い難いだろう。使われる言葉はやや抽象的でもあり、中途半端な読者を拒むことを恐れていない。浮かび上がる人物像がとにかく驚異的なのだ。肉感的であり文学的であり、その鮮烈さは圧倒的だ。

 冒頭の一文は最後までこの文章を統括する。読後に再び触れると良いと思う。その具体的なイメージが浮かび上がってくるだろう。
(神田良輔)