サイト 『 三階ぞめき 』
作品 こめきねそ



 僕は、現代日本文学の良い読者ではないと思う。どういうものが流行っているか、またはどういう文学が現代に影響を与えているのか、答えることができない。白状してしまえば、それを知ろうとしているとさえ言えない。

 行き当たりばったりにこの「こめきねそ」を読んでみた。
 今までに読んだことがない物語だ、と思った。
 現れる小道具に特徴があり、それらが次々に展開していき、物語を続けさせる。それらが統合され、一つの物語として読めるのは、透徹する視点となんらかの熱情を持つ、作者の筆力のおかげだと思った。軽やかな文章には、読みづらいところも、頼りないところもない。最後まで読み終わる頃には、全体として敬虔な祈りを聞いたようにも、精緻な点描画を見つめたようにも思えた。

 不確かなものを知り、経験しながら、それらを一つづつ忘れていくことが、生きていくことのようにも思う。つまりはそれが、小説を読むということではないか、と思う。
 センス・オブ・ワンダー、サプライズ、ヒストリー……それらを作り出したこのweb上の小説を、作者は、並べたもう一つの小説、『臭い』とともに、「なにかが根本的に間違っている」(stor.html)と言う。
 これは徒労なのだろうか?非現代小説なのだろうか?小説への一つの試みなのだろうか?
 そこには美しさがあると、僕は思う。浄化されるような体験が、「こめきねそ」読書体験だ。僕にとって。

(神田良輔)