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以下は2006年1月にアルジャジーラにより放送されたウサマ・ビン=ラディン[0]のオーディオテープの日本語完訳である。翻訳の元にしたのは、BBCによる英語訳である。同時にAP通信による英語訳も参考にした。 グリニッジ標準時2006年 1月19日、15時を少し過ぎた頃、アラブ全域にまたがるテレビ局アルジャジーラはアルカイダの指導者ウサマ・ビン=ラディンによるものと称するオーディオテープを放送した。その声はアルカイダがアメリカで新たな攻撃を準備していると話している。これはアルジャジーラのウェブサイトに掲載されたメッセージの全文である。米中央情報局(CIA)は19日、この録音をウサマ・ビン=ラディン本人のものであると鑑定した。 |
http://newsimg.bbc.co.uk/***.jpg |
英語対訳付きはこちらからどうぞ。
私があなた方へ向けるメッセージ、それはイラクとアフガニスタンにおける戦争とそれを終わらせる方法に関するものであります。
私はこの問題についてあなた方にお話しするつもりはありませんでした。と言うのも、私たちにとって、この問題はすでに決着しているからです。ダイヤモンドがダイヤモンドを切る(甲乙つけ難い好勝負)という意味で。
アラーを称えよ、我々の状況はあなた方の状況とは逆に、常に改善され好転しています。
しかしながら、私を話すように促したのは、あなた方の大統領ブッシュがアメリカの世論調査の結果に関して述べたコメントの中で彼が繰り返す詭弁であります。その世論調査はあなた方の圧倒的多数が軍のイラクからの撤退を希望していることを示したのですが、彼はこの要望に異議を唱え、部隊の撤退は敵に間違ったメッセージを送るだろうと述べました。
ブッシュは言いました。「彼らが我々と我々の土地で戦うのに比べれば、彼らと彼らの土地で戦うほうがいい」
これらの詭弁に対して私の反論を言いましょう。「イラクの戦争は激しく続いており、アフガニスタンにおける作戦は我々の有利に進んでいる。アラーを称えよ」
莫大な物質的損失、および前線における兵士の士気の低下や彼らの間に見られる自殺の増加は言うまでもなく、ペンタゴン(アメリカ国防総省)が発表しているように、あなた方の死傷者数は増加の一途を辿っています。
そこでちょっと想像してみてください。地雷に触れてバラバラに引き裂かれた仲間の死体の欠片をかき集めるうちに、ノイローゼに苛まれる一人の兵士の姿を。そのような状況の結果、その兵士は二つの炎の間に立たされることになります。もし彼がパトロールをしに彼の兵舎を出ることを拒めば、彼はベトナム人虐殺者[ラムズフェルド][1]の処罰に直面するでしょうし、もし彼が外に出れば、彼は地雷の危険に直面するでしょう。
したがって、彼は二つの苦境の間に立たされています。それは彼を恐怖、恥辱、そして強要といったような――精神的重圧の下に置くでしょう。そのうえ彼の家族は彼に対して注意が足りず、彼は自殺するしか選択の余地がありません。
彼と彼の自殺についての話、それは苦痛に苛まれる彼が血と魂によってあなた方へ書いた強いメッセージです。あなた方が救えるものを地獄から救ってくださるようにと。しかしながら、あなた方が耳を傾ければ、解決はあなた方の手中にあるのです。
我々の同志ムジャヒディン(イスラムゲリラ)に関するニュースは、しかしながらペンタゴンによって公表されるものとは異なっています。
ニュースメディアによって放映されるものは地上で実際に起きたことには適わないということをこのニュースは示唆しています。実際の状況について事実を放映するニュースメディアをその標的にすることで、ホワイトハウスは彼らが管理する情報について疑惑を深めています。
世界の自由の虐殺者[アメリカ大統領ブッシュ]がアルジャジーラ衛星放送のカブールとバグダッド支局を爆撃した後、カタール国の本社爆撃を計画していたことを示す文書が最近明らかになりました[2]。お粗末なことに、それ[アルジャジーラ]を建てたのはあなた方だと言うのに。
アメリカ軍とその工作員は彼らの犯罪とサダムのそれとの間に大した違いがなくなるほどに、あらゆる抑圧的な手段を取っています。それにも関わらず、おお、アラーを称えよ、ジハード(聖戦)は続いています。
これらの犯罪には女性を強姦したり、彼女らをその夫の身代わりに人質として拉致したりすることも含まれています。彼女らは無力でアラーの御力にすがるよりほかにありません。
男性への拷問には化学酸を用いたり電動ドリルで彼らの関節に穴を開けるといったことまで行なわれています。そしてもし彼らがそれですっかり駄目になってしまえば、彼らは死に至るまで頭にドリルを押し付けられるのです。[3]
もしよければ、アブグレイブおよびグアンタナモ刑務所における残虐行為と犯罪に関する人道主義報告を読んでみてください。
あらゆる野蛮な方法を用いているのにも関わらず、彼らはレジスタンス(抵抗運動)の鎮定に失敗していると言えます。おお、アラーを称えよ。ムジャヒディンはその数を増やし続けています。
実際、これらの報告書は四人――ブッシュ、チェイニー、ラムズフェルド、そしてウォルフォウィッツ――の不吉な企ての頓挫と壊滅的失敗、およびこの敗戦とその解決についての発表が行なわれることは単に時間の問題であることを示唆しており、それはこの悲劇の大きさについてアメリカ国民がどの程度自覚しているかにかかっています。
賢明な人ならば、ブッシュは彼が主張するイラクでの勝利、そんなことを達成できる計画など全然持っていないことをわかっているでしょう。
ブッシュが大規模な作戦は完了したと空母からその見当違いで愚かに芝居がかった発表をしたときの死者数の少なさと、小規模作戦において倒れたその何倍もの死傷者の数を比較してみれば、私の言っていることの正しさや、ブッシュと彼の政権が彼ら自身のいかがわしい理由のために、イラクから撤退する気持ちも意志も持っていないことがわかるはずです。
話を最初に戻して言います。世論調査の結果は気の確かな人々を納得させるものであり、それに対するブッシュの反論は見当違いです。
彼の主張とは異なり、アメリカとその同盟国に対する戦争がイラクの中に限られたものではないことは現実が証明しています。
事実、イラクは(我々の)人的資源の広告塔となり、新兵募集の場所となりました。[4]
一方で、ムジャヒディンは不正義な連合国によって採用されたあらゆるセキュリティ対策を繰り返し突破することに成功しました。アラーを称えよ。
その証拠に、この侵略国家連合に加わったヨーロッパ主要国の首都における爆発をあなた方は目撃したはずです。
アメリカにおいて同様な我々の作戦の実行が遅れていることについては、これはあなた方のセキュリティ対策の突破に失敗したせいではありません。
作戦は目下のところ準備中であり、アラーの御意志の下にそれらが完了すれば、あなた方はあなた方自身の土地でそれらを目にすることになるでしょう。
上述したとおり、我々はブッシュの主張は間違っていると理解しています。しかしながら、彼によって斥けられた主張、すなわち部隊の撤退に関する世論調査の結果の内容は、イスラム教徒と彼らの土地で戦うことも、彼らが我々の土地で我々と戦うことも望ましくないというものでした。
我々は我々が尊重する公平な条件に基づいて、あなた方と長期停戦をするのにやぶさかではありません。
我が民族は裏切ったり嘘をつくことをアラーに許されていません。
この停戦で、両陣営はともに安全と安定を享受し、戦争によって破壊されたイラクとアフガニスタンは我々の手によって再建されるでしょう。
この解決策にとって唯一の障害は、ブッシュの選挙運動を何十億ドルも使って支援したアメリカの有力者や武器商人に流れ込む何千億ドルもの資金を妨げることです。
つまり、我々はブッシュや彼の仲間が戦争を継続する理由をとっくに理解しています。
もし、あなた方に安全と平和を手に入れようとする本物の意志があれば、我々はすでにあなた方に応えていたことでしょう。
もしブッシュが[我々に対して]嘘をつき不当な扱いを続ける以外は承知しないと言うのなら、「ならず者国家」[5]という本を読むことがあなた方の助けとなるでしょう。その序論には次のように書いてあります。「もし私が大統領ならば、私はアメリカに対する作戦をやめさせることでしょう。
まず最初に、私は未亡人、孤児、そして拷問を受けた人々に謝罪を表明するでしょう。それから、私は世界各国におけるアメリカの干渉は永久に終わったと発表するでしょう」
最後に、私はあなた方に述べさせていただきたいと思います。この戦争は、あなた方の勝利となるか、我々の勝利となるかのどちらかである、と。もし、我々が勝利すれば、それは風がアラーの御加護によってこの方向に吹いている限り、永遠にあなた方の敗戦と恥辱を意味するでしょう。
もし、あなた方が勝利すれば、あなた方は歴史を学ぶことになるでしょう。我々は不正義には屈せず、永遠に報復を求め続ける民族なのです。[6]
我々がアラーの御意志の下に9月11日にやったように復讐を遂げずには、また、あなた方の精神が衰弱しきり、あなた方の人生が見るも無残なものとなり、事態が[悪い方へと]変化し、あなた方がそれに我慢できなくならずには、日夜が過ぎることはないでありましょう。
我々には失うものがありません。海で泳ぐものは雨を恐れない。あなた方は我々の土地を占領し、我々の名誉を傷つけ、我々の尊厳を踏みにじり、我々の血を流し、我々の富を略奪し、我々の家を破壊し、我々から家を奪い、我々の安全を脅かしました。我々はあなた方を遇するに同じやり方をもってするつもりです。
あなた方は我々に相応しい生活を我々から奪いましたが、我々に相応しい死を我々から奪うことはできないでしょう。我々の宗教が奨励するジハードの遂行を躊躇することは、恐ろしい罪です。我々にとって最良の死は剣影の下にあります。
あなた方の力や現代兵器を過信しないことです。それらは一部の戦闘では勝利するでしょうが、戦争には負けます。忍耐と不屈の闘志はそれらに勝ります。重要なのは最後の結果です。
我々はわずかな武器だけでソビエト連邦との戦いを10年間も耐え抜き、彼らの経済を破綻させることに成功しました。
それらの戦いはアラーの御加護の下で歴史となりました。
あなた方はそこから教訓を学ぶべきです。我々はアラーの御意志の下に、最初の死の時が訪れるまで、忍耐強くあなた方と戦い続けるでしょう。我々は我々の手に武器が握られている限り、戦いから逃げることはありません。
私はただ死を誓うのではなく、死の苦痛を味わうときも自由な人間であることを誓いたい。私が恐れるのは恥辱や背信なのです。
御導きに従う者の上に平和あれ。
【訳注】
[0]
Usama/Osama bin Ladin/Laden
オサーマ(オサマ/ウサーマ/ウサマ)・ビンラーディン(ビン=ラーディン/ビンラディン/ビン=ラディン)。
[1]
the Vietnam butcher
アメリカ軍、あるいはそれを代表するラムズフェルド国防長官のこと。ビン=ラディンは2003年11月に公表されたオーディオテープにおいて次のような言及をしている。
What do your governments have to do with the criminal gang in the White House that's against Muslims? Don't your governments know that the White House gang is the greatest killer of this era? Here's Rumsfeld, the Vietnam butcher, he killed over 2 million people in addition to the injured, and Cheney and Powell are responsible for more killings and destruction in Baghdad than Holako of the Tatar.
あなた方の国はイスラム教徒と対立するホワイトハウスの犯罪集団と共に何をしなければならないのでしょう? あなた方の国はホワイトハウスのギャングが今日最大の殺人者であることを知らないのでしょうか? ここにベトナム人虐殺者、ラムズフェルドがいます。彼は負傷者を除いても200万を超える人々を殺しました。そしてチェイニーとパウエルはバグダッドにおいてタタールのホレコ(1258年にバグダッドを攻略しアッバース朝を滅ぼしたモンゴル帝国のフレグ)よりも多くの殺害と破壊を招きました。
http://www.niu.edu/phil/~kapitan/Bin Laden Speaks.html
AP通信による英訳では、アメリカ軍(U.S. army)との解釈である。
[2]
2005年11月22日付の英大衆紙デイリー・ミラーによる報道。
アメリカのブッシュ大統領が会談でイギリスのブレア首相にカタールのアルジャジーラ本社爆撃を持ちかけたが、ブレア首相が反対したため実施には至らなかった。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/FA5DC791-B0D3-418E-9946-87162E6C6EC1.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051123-00000076-kyodo-int
[3]
2005年11月29日付のニューヨーク・タイムズによる報道。
http://www.democracynow.org/article.pl?sid=05/12/01/1526201
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/97791d6c192756a5834dbc2dd9973e81
[4]
In fact, Iraq has become a point of attraction and recruitment of qualified resources.
解釈が難しい一文なので、AP通信による英訳も引用しておく。
Iraq has become a point of attraction and restorer of (our) energies.
[5]
"The Rogue State", the introduction of which reads: If I were a president, I would halt the operations against the United States.
First, I will extend my apologies to the widows, orphans, and the persons who were tortured. Afterwards, I will announce that the US interference in the world's countries has ended for ever.
Blum, W., 2002, Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower, New Updated Edition. London: Zed Books, April 2002.
邦訳:『アメリカの国家犯罪全書』 ウィリアム ブルム (著), 益岡 賢 (翻訳)の「新版へのまえがき」中の一節のことである。
以下に問題の一文の前後を益岡訳で引用する。
では、アメリカ合衆国は、どうすれば自分に向けられたテロリズムを止められるだろうか。テロリストたちから反米の動機を除き去ることに鍵がある。そのためには、本書が示すようなアメリカの外交政策を大転換する必要がある。
私がアメリカ大統領だとしたら、米国に対するテロ攻撃を数日のうちに止めることができる。しかも、永遠に。まず、アメリカの犠牲となったすべての寡婦や寡夫、孤児たちに、また拷問を受け貧困に突き落とされた人々に、そして何百万もの犠牲者たちに、謝罪する。それから、できうるかぎりの誠意を込めて、世界中の隅々にまで、アメリカの世界への軍事的・政治的介入は終了したと宣言し、イスラエルに対しては、もはやイスラエルはアメリカ合衆国の第五十一番目の州ではなく、当たり前のことではあるが、外国の一つであると告げる。それから、軍事予算を少なくとも九○%はカットし、それによりあまった予算を犠牲者への賠償にあてる。充分な資金が利用できるだろう。米国年間軍事予算の三三○○億ドルがあれば、イエス・キリストが生誕してから現在までの毎時間、一時間あたり一万八○○○ドル以上を使うことができるのである。
ホワイトハウスで最初の三日間に、私は以上のことを行なうだろう。四日目に、私は暗殺されるだろう。
参考:ビン・ラディン推薦の本、米国で売り上げ急増(REUTERS)
[6]
If you win it, you should read the history. We are a nation that does not tolerate injustice and seek revenge forever.
not と and の関係が微妙な一文なので、AP通信による英訳も引用しておく。
If it is the latter, read history! We are people who do not stand for injustice and we will seek revenge all our lives.
【訳者後記】
非常に見出しを付けにくい演説ではないかと思いました。アルジャジーラの付けた見出しを拝借して、「米国民に停戦を提案」としましたが、アメリカ本土での自爆テロを予告したものでもあり、徹底抗戦を主張したものでもあります。前回よりはずっと脅迫地味ている気がします。
それにしても、前回の「華氏911」もそうでしたが、ビン=ラディンはいわゆる左翼系の報道や著作物によく精通しているなあと驚かされます。このことについてはいろんな見方ができると思いますが、はてさて一体、ビン=ラディンはどこへ向かうのでしょうか。あなたはどう思いますか?
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