fragment -4 人物 ・兄 ・妹 ・「混乱」 ・「秩序」 状況 [とても静かな部屋。兄と妹が並んで座っている。その前で二人が向かい合っている。緊張した面持ちだ。] 「ねえ、兄さん」妹は尋ねる。 「なんだい?」兄は答える。 「あの二人はいったいなんなの?」 「ううん、ヒトコトでは説明しずらいね。究極の対立というか、”対立”自体を生み出したものたちとか、ともかくそういう二人だよ」 「もっとくわしく教えてちょうだい」 「本にも書いてあるよ。ほら、ここに弁証法について書いてあるだろう。これの極みがこの二人だと思っていいよ。こっちの本では資本家と労働者、こっちの本ではラングとパロールって書いてある。こんなものだよ」 「まあ、本当!」 「人間もがんばってるよね」 兄と妹は黙る。 向かい合っていた二人のうち、1人が兄と妹のほうを向く。 「すみません」 「なんだい?」兄が答える。 「わたしたちに名前をつけていただけませんか?」 「そうだね」 兄は黙りこむ。 「ねえ、兄さん。『混乱』と『秩序』ではどうかしら?」 妹が兄に言う。 「そうだね、じゃあそれでいこう。キミは『秩序』だ。いいかい?」 「はい」秩序は答える。 「そしてキミは『混乱』だ。いいかい?」 「はい」混乱は答える。「私たちは?」妹は尋ねる。 「『外部」だよ」兄は答える。 妹は答えなかった。 ←_ |