手はじめに 私事になりますが、私が五年前にインターネットに手を出して、初めて立ち上げた自分のサイトは、自作小説と幾つかの投稿小説を掲載するという、とても私の手に余りそうな、壮大な狙いを持った文芸サイトでした。ネット自体には全くの素人で、それを大きくする手だても知らぬうちに、HTMLによって可能となる様々な手ばかりを無駄に覚え始め、ビジュアルやサウンドにまで手を染めた結果、終いには手の施しようが無くなって破綻しました。 それから数年の試行錯誤の末、結局テキストサイトという部類に落ち着きつつ、心のどこかに純粋なる文芸サイトへの未練を残して悩んでいた頃、「東京文芸センター」なるものが始まると聞き、これは是非手を組んでみたいと思いました。コンセプトとして、サイト自体が手の込んだものでなく、シンプルに文章だけを置いているのが、とても良い。この手のサイトは、ありそうでなかなか無いので気に入ってます。 そして、ここで書き始めて一年が経ちました。この経験により私の文章の手が上がったかどうかは不明なのですが、今後も手を抜かずに頑張っていきたいものだと思いつつ、軽い気持ちで「そういえば次回で一周年だから、何か企画をしませんか?」と発言したのが、つい一ヶ月前。それが、この「20本の手」の始まりでした。 大人数での競作という企画にすることが決定し、テーマが選定され、何人もの書き手の方に大急ぎで執筆依頼をしました。手強い方もいらっしゃいましたが、それでも少しずつ作品が集まってきて…。この間、わずか一ヶ月。紙媒体では、とてもあり得ない進行状況です。ネット文芸は紙媒体より劣るといわれますが、こんなに迅速に形になるというのは大きなメリットで、やはりインターネットを利用しない手は無いな、と心から思います。 というわけで、締め切りまでの日数が少ないのにも関わらず、快く執筆してくださった各著者の皆様に、心から感謝すると同時に、企画に慣れていない私たちの手ぬるい説明や段取りで手を煩わせてしまい、本当にすみませんでした。そして、私の『なんとなく』の発言にここまで手を入れて、猫の手も借りたいほど忙しい中にも、手分けして著者集めや詳細の決定、そして編集作業に手をかけてくれた東京文芸センター関係者の皆さん、お疲れ様でした。それから、各所から集まってくださった読み手の皆さん、残念なことに、結局「20本に満たない手」となってしまいましたが、どうぞ色々な「手」を楽しんで行ってください。 今後も、行く手を阻むものもありましょうが、あの手この手で乗り切って、書き手も読み手も楽しめる東京文芸センターが続いて行くと良いな、と手を合わせて祈りつつ。 (潮 なつみ)
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