後記
 

 消えて無くなりそうだ、と思った。半透明な自分。徐々に自分が見えなくなる。まるで最初から僕なぞ存在しなかったようだ。或いは其れが真実なのかもしれないが、僕は自分の考えを形有る物にする為、ここに文章を残そうと思う。全ての事象に意味を付ける事は、とても、とても心地良い。
 しかし僕らは何故考え、悩むのだろう。あたかもまるで生きる事にとって、考える事や悩む事が欠く事のできない必要不可欠な事のように。僕らは毎日、思考の奴隷となり、理性の僕となる。一体、僕らが恵まれていないとてもいうのだろうか!僕らにとって何より必要なのは、知的好奇心でも物質的欲求でもない。僕らには、たった一つ、満足さえあればいい。ただ、それだけが僕らには無いんだ!
 何も僕はここに愚痴を吐き記しにきたんじゃない。僕は、僕は何時だって満足しない。僕は、自分に満足しないのと同じだけこの世の中に満足しない。僕は、僕はここに宣言する!僕がその気になれば、真実だって変えられる!僕は確かにここにいるんだ!僕の生には確かに意味があるんだ!

 それは下らない自己主張。だけど僕にはそれしかできない。

 なに、大した事じゃない。僕は自分の思った事や感じた事を書こうとしているだけなんだ。僕の頭の中は僕の生きている世界よりずっと広大なんでね。



東京文芸センター Vol.11


執筆 :岩井市 英知
上松 弘庸
潮 なつみ
神田 良輔
後記 :上松 弘庸
タイトルページデザイン
岩井市 英知
監修 :東京文芸センター