後記
 
 

「楽しくないよお。もう、嫌で嫌でたまんない時あるよ。(中略)でも、ほら、ジョギングの後のビールはおいしいって言うでしょ。書いてる時は、うんざりだけど、書き終わった後の気分は、それと一緒。」

( 『ひざまづいて足をお舐め』 山田詠美 )


 上の台詞は、活字が大嫌いな主人公が、彼女が一番の信頼を置く小説家の女友達に「小説を書くのは楽しいか」と聞いた時に、返ってきた返事である。

 この小説を初めて読んだのは1年以上前。でも、そんな会話があったことは憶えていなかった。当時まだ私は定期的に小説を書いていた訳ではなかったし、なんとなく読んで、なんとなく流していたのだと思う。ところがつい最近、再び本棚から引っ張り出して、通勤電車の中で読み返していたのだけれど、その文章を目にした時、私は心の中で「そうなんだよ!」と叫んだ。

 私事になるけれど、私は毎月ここで活動してるくせに、実はいつも自分の書く文章に不安を抱きながら小説を書いている。これで良いんだろうか。他の人が読んで面白いんだろうか。つまずきながら何度も何度も書き直して、それでもなかなか納得が行かなくて、落ち込んで。書いている途中に段々心が病んでくることもしばしば。でも、やっとの思いで納得のいく作品が完成した時のなんとも言えない達成感は、一度味わったらやめられないのだ。

 今、PCの左隣に置いてある缶ビールは、きっとジョギングが終わった後のビールと同じくらいおいしい。

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 佐藤由香里です。毎日寒いですが、いかがお過ごしでしょうか。
 実は私は先月、風邪から気管支炎を併発してしまい、さらにそこから肋間神経痛になって、ボロボロの1月でした。皆様も体調にはくれぐれもお気をつけて。



東京文芸センター Vol.28


執筆 :上松 弘庸
佐藤 由香里
藤崎 あいる
美咲
後記 :佐藤 由香里
タイトルページデザイン
岩井市 英知
監修 :東京文芸センター