そらを見たことがありますか。
そらはとてもひろい。
もう、この前まであった真冬の白さを、
見つけることは困難になっています。
これから雨が降る度に少しづつ、
春に近付いていくのでしょう。
春が来たら、夏はすぐそこ。
あの人と二人で過ごした日の空は青かった。
もっと、鮮やかで、目の覚める色をしていた。
あの人が好きだった本、
あの人が好きだった音楽、
あの人が好きだった人、すべて。
わたしはそらを通じて思い出してしまう。
あんなにひろいのに、忘れられません。
あの人が好きだった本を読み返す。
春めいた空の下で、読んだ。ゆっくり。
本と空はあの人を思い出させる。
あの人とわたしはもうとっくに死んだのに、
本だけは生きていてくれる。
空はいつまで生きていてくれるんでしょうね。
どれだけのものを見ているんでしょうね。
わたしはこれから、どれだけのものを。