「ぶちのめしてやるぜ、お前のその糞っタレな頭をな」
第三の新人と呼ばれた作家たちは各々武器を手に取り、僕らの前で一つニヤリと笑う。奴らのお手製武器は強力だ。深く鋭く僕らをえぐる。
奴らの強大さの前には立ちすくむ。僕らは思考を停止して、ある時にはその脅しに従順に、そしてまたある時には必死に抵抗して、奴らを飼い慣らしていく。飼い慣らしたつもりになって優越感に浸っている場合じゃないぜ。奴らは死んだふりが思いの外上手い。ノホホンと生きている人間は、脳細胞に、はたまた毛細血管に、奴らの種が蒔かれていく。
「馬鹿だねぇ」と、安岡章太郎はそこで笑いやがったかもしれない。
「まだまだ、奴らは革新しない」と、吉行淳之介は苛立ちを見せながら種を蒔き続けていたかもしれない。
忘れた頃に発芽するお手製武器。茎は即時に全身のあらゆる場所を駆け巡り、僕らを縛り付けていく。ここで気づいた奴は優秀だ。冒されても心配いらねぇ、社会生活に支障は無いぜ。ほら、安心だろ?
「面倒なことになったぜ。奴はまだ気づいちゃいねぇ」
「気づいた頃には手遅れさ。蝕まれていく」
「毒には毒をって言うだろ?」
一人の優男が良心を遮った。
「君らに僕が理解できるとも思えないけれどね」と、優男は言う。
新たな種が蒔かれていく。僕らの身体の中にはもう無数に種が存在していた。いつ、発芽する? いつ、爆発する?
種はお互いが争っている。我先にとばかりに、共食いだ。早くしないと、ゲームオーバーはすぐそこだぜ? リセット機能は残念ながらないからな。さあ、誰が救ってくれる。自分で? ムリだね。僕らにはムリだ。さあ、優男が建物の陰から僕らを見てる。きっと僕らには、新たな救世主がいる。
その前にお前のお手製武器を見せてみな。
「諦めちまったら、そりゃムリさ」と、種を蒔きながら太宰はほくそ笑んでいるよ。