後記
 
 

 物語はいつも悲しい。
 それは終わりがあるからだ。物語はいつか終わりがやってくる。そして、始まりは終わりのためにあって始まりのためにあるわけではない。始まったものはいつか終わりがやってくるのだ。サッカーは開始されれば90分後には終わってしまい、一日なんて24時間で終わってしまう。人生も始まれば何十年後かに終わりがやってくる。
 物語は終わるために始まるのだ。今日も明日もどこかで終わりがやってくる。

 じゃあ、終わらないようにすればいいんじゃないか? と、浅はかな人間はいつも考えるのだが、終わりのないエンドロールなんてまっぴらな僕らは、一方で終わることにホッとしていたりもする。終わりがあるから落ち着いていられるわけだ。
「あぁ、今日もちゃんと終わったね」と。

 始まりのない物語なら、終わりもないのだけれどね。




東京文芸センター Vol.47

執筆 :朝倉 海人
織る子
藤崎 あいる
吉川 トリコ
後記 :朝倉 海人
構成 :岩井市 英知
表紙 :佐藤 由香里
監修 :東京文芸センター