珈琲ブーガルー 「外回り行って来ま〜す」 「おいッ! こらッ! 葉山ッ! まだ話は終わっとらんだろうが〜ッ!」 乃村部長の小言をやりこめる術は持ち合わせてないが、「いってきま〜す」とヘラヘラ笑って逃げることは可能。 週のまんなか水曜日。 ほどだるいものはなく(いや、いつだって仕事はだるいものだが)明日明後日残り二日を如何に乗り切るか(手を抜いて楽をするか)?が切実。 せっかくの秋晴れ。 なのにいつもの営業車(大衆的な白いカロ→ラ。没個性。だけどレトロ)で会社の地下パ→キングをでて、遅々として進まない車の列に割り込んだ。ここはいつだって渋滞で、車で外回りなんて納品でもない限りデメリットでしかないのだが……ぜってぇ、電車と徒歩のほうがはえぇって。あ〜だりぃ〜ったくよ〜。 いつもと同じ。上司の小言も「あ〜だりぃ」と「あ〜ねみぃ」と繰りかえす言葉に意味があるわきゃない。 欠伸をするのも、ポケットからくしゃくしゃのマルボロ(絶対にメンソ→ルではない)を引っ張り出してマッチで火をつけるのもいつもと同じ。 僕は腕時計のデジタルが1、5、3、0、と揃うのを確かめて、少し早いがマルキュ→製薬へと向かうことにした。 時計のデジタルが1、5、5、0と並んだ。約束の時間は四時だからあと十分はある。 マルキュ→製薬の隣にある専用パ→キングに車を止めてメ→ルチェック。急ぎの用件がないことを確認。それからケ→タイで乃村部長に「今渋滞なんですが、夕方にはマルキュ→さんに向かいます」と告げ、いかにも忠誠心だけはある部下を演じて見せた。そしてさらにマルキュ→製薬の高崎課長に電話をした。 「ハクツウ堂の葉山です。例の学会の論文ですが。残りの原稿は揃いましたでしょうか?」 「すまんすまん。やっぱり六時を過ぎそうなんだ。この穴埋めに次の新薬のカタログは葉山クンに発注するから」 ペコペコ。いつもは横柄なクライアントさまも自分の都合が良くない時は、気持ち悪いくらいに媚びへつらう。そうそう。サラリ→マンってのは意外と浪花節なんだよ。全てじゃないがゼロでもないってこと。 僕はわざとらしくため息をつきながら 「しょうがないですよ、高崎課長のせいじゃないんですから……頑張ってみますか。だから、次の新薬、うちにお願いしますね?」 そうそう。営業なんだから、このぐらいの駆け引きはやるよ、それはきっとお互いさま。 「私が嘘を言ったことがありますか? 大丈夫です。信じて下さいよ」 と、泣きそうな声ですがりつく高崎課長に 「もちろん。信じていますとも、課長」 と僕は笑みを浮かべながら返す。 いや、これも営業ト→ク。そんな美しい関係がたやすく築けるはずがない。が、貸しをつきつけりゃ、相手を傷つけずこっちのペ→スに持ち込める。これほど楽な商売はないでしょ? 課長が何度も「すまんすまん」と言いながら、原稿が届けばそちらへ連絡を入れるということで終話した。電送すりゃ解決するんだけど、こんな大手の会社の癖に使いこなせる人間がほとんどいないってのが、問題かも。 特急料金として二割ほど上乗せしておこうか? 電卓で見積もりをはじき直して僕はふふっと鼻で笑った。 さぁ、これでしばらくは自由の身だ。紺のジャケットを脱ぎ、幅広レジメンタルタイをしゅっと引き抜き、う→んと伸びをした。僕の後に新卒がこないからって入社二年たっても「オコサマ」扱いされるのは、このネクタイのせいかな? ちとダサイ? まぁ、いっか。どうせ仕事。プライベ→トでつけるにはさすがにちょっとね。クライアントもオヤジにオバハンばっかりだから、こういう無難なものがツブシがきく。 下手に変えようもんなら 「あら、葉ァちゃんったらぁ、急に派手になっちゃったわね? できたの?」 なんて、小指を立てて笑われたコトが一度ある。だから会社モ→ドのス→ツはとにかく控えめにしようと決めた。残念ながら小指を立てられるようなそんな女性(ヒト)はいないし、いればもっと小マシな格好してるって。 ケ→タイをバイブにセットし直して車を降りた。足早にマルキュ→のパ→キングから裏の路地へとでる。思いっきり羽根を伸ばす訳には行かないが、多少の好奇心を満足させることはできるだろう。 クライアントであるマルキュ→製薬の真裏の路地、徒歩十分ほどのところにある一軒の小さな民家の前にたった。 大きな通りに面してない、そして昼間でも薄暗い路地にあるため、どう見たって人がいるとは思えないシロモノ。 だが、僕は見つけたんだ。先週やっぱりマルキュ→にきたときのこと。まっ昼間から、いつだって黄昏てるこの路地裏で、蔦をびっしり絡ませたこの建物の。そのドアノブに「準備中」の札がかかっているのを。 これがなければ僕はこんなにこだわったりなんかしなかった。それに、どうみたって今もやっているとは思えない……人が出入りするところなんてみたことないし、第一「準備中」の文字だって上下逆に書いてんだから。 雨風しのげて、ついでにウマい珈琲が飲めて、ゆっくりサボれればなんだっていいんだけど、同じ払うなら居心地の良い店……それも人のしらない穴場ならなおのこと……まぁ、身勝手な贅沢だけど。早い話が廃屋にしか見えないお粗末な建物なのだ。人の気配なんてまったくしない。するなんて思えない。それにビルで整頓された都会で、今どき煉瓦作りの一軒家なんてますますみかけない。到底喫茶店なんかには見えない。ドアを開ければ霊験新たかな婆さんが水晶占いでもはじめそうな雰囲気がプンプン。 しかし僕はそのドアを開けた。 欲望と好奇心が囁くままに。 案の定(といっていいのか)、カランコロンとカウベルのような牧歌的な呼び鈴が鳴ると、「いらっしゃいませ」と若い女の子のソプラノが出迎えてくれた。 オレンジ色の灯り。決して蛍光灯では得られない安らぎが僕を包み込んだ。外からは全く想像がつかないモダンな作りをした店内に僕はあっけにとられていたに違いない。 しかし、ソプラノの主は何処にも見当たらない。今立っている場所から奥はぼんやりとして、はっきりとは見渡せなかった。だから、入っていいのかどうか判らず、また、ここが何の店なのかも判らないまま、ドア口から一歩も進めなかった。 すると突然、一人のウェイトレスがホログラムのように現れた。 「いらっしゃいませ」 先ほど聞いたあのソプラノの主らしい。僕の前に現れたのは、よくあるメイド服の女の子。なんだか中学生とか高校生ぐらいにしか見えないのは、幼い顔立ちと凹凸がはっきりしない体つきのせいかもしれない。あの窮屈そうな紺のワンピ。けれど半袖(それもちょうちん袖)からすらりと伸びた腕からは、何故か育ちの良さが伺えた。白い胸あてのついたエプロン。レ→スのフリルがたっぷりとあしらわれて、清潔さと儚さを印象付けた。 それでも僕が黙ってつっ立っていると、彼女がにっこりと 「どうぞ、こちらへ」と奥の席へ促した。 僕は恐る恐る彼女のあとをついていった。 ソファに腰を下ろすと、僕の座った所以外はぼんやりと霞んで、やっぱり見渡せなかった。歩いてる時は、ほんわりと灯りがついていたはずだが、ひとたび座ると映画館のように、人の気配がかすかに残る闇となった。 参ったな……とビクビクしながらテ→ブルに出されたメニュ→を開いた。そしてわずかな灯りでみるメニュ→に、また僕はフクザツな気持ちになった。 コ→ヒ→ ¥500〜 と記載されたあと、さまざまなウェイトレスの全身写真がのっている。 ショ→トボブの女性の足元には五百円、その隣の女性はロングヘア→で千円と記載がある。その調子でどんどん値段が上がっていく。 え? コ→ヒ→だけ? ってか、なんで¥500〜なんだよ? 豆の種類の代わりに女性の写真かぁ……なんだ? この店……いや、落ち着け落ち着け……ここは喫茶店だ。そうそう、喫茶店……らしい……コ→ヒ→専門店?……あ! そうかッ! コ→ヒ→の味を純粋に楽しむ為の店かも? そうだ……きっとそうだ。 なんとか少ない知識をはぎ合わせて、あり得る話に仕立て上げ、一人納得していると、先ほどのウェイトレスがやってきた。 「ご注文は?」 コ→ヒ→としか書いてないのに何を? 僕はふき出しそうになりながら、 「コ→ヒ→お願いします」とだけ告げた。 彼女は伝票らしいメモに書きながら、さらにこうきいてきた。 「おいくらになさいますか?」 「え? このコ→ヒ→って豆が違うんですか?」 「いえ、当店のオリジナルブレンドになります」 マニュアルどおりの答え。完璧だ……ってか、じゃぁ、なんで値段が違うんだ? 「ご指名頂いたウェイトレスがお持ちするシステムなんですが?」 あぁ……そういうことか……鈍い僕でもようやく合点がいき、豆が同じならと思い 「あの……五百円のでいいです」 「かしこまりました」 そういって、メニュ→を取り上げ、ぺこりと丁寧なお辞儀をしてウェイトレスが消えた。 はぁ……僕は大きなため息をついた。まさか、コ→ヒ→一杯ででこんなに緊張するなんて思ってもみなかった……だが、雰囲気は悪くはない。ソファの座り心地だって上等上等。あの建物からじゃ到底判らない、見た目でなんでも判断しちゃいけないな……なんて、改めて思っていたわけで。ケ→タイのメ→ルチェックなんかをしていた。 五分ほどたった頃だろうか? 「お待たせいたしました」 僕はケ→タイの画面から顔をあげる。 たしかに、あのメニュ→でみた女性がそこにたっていた。ここの制服だろうか。先ほどの女性と同じ紺のワンピ。それも膝上一〇センチと短め。二の腕はまるで陶磁を思わせるほどの白さ。白い胸あてのついたレ→スのエプロン。ウエストできゅっと絞って後ろに結んだリボンが、一層くびれを強調させる。 さっきの女の子と明らかに違うのは、もうすっかり成熟した女性の雰囲気を醸し出しているところだろう。これほど女の匂いを封じ込めながら、逆に嫌と言うほどその芳香を撒き散らしている。 まるで男の欲望を駆り立て、そそるためにあるとしか思えない。この頃の女性から失われた男の理想と幻想が目の前の彼女にはたっぷりと詰まっている。 そんな気がした。 しばらく彼女に見とれていたが、やっと質問をした。 「あの……コ→ヒ→……まだ?」 その言葉を聞くや否や、まるでイヤイヤをする少女のように、彼女は赤らめた顔を左右に振った。ショ→トボブがさらさらと揺れ、その度にシャンプ→の匂いと柔らかな匂いがふわっと漂った。 「いや、その……コ→ヒ→って頼んだはずなんだけど」 「あ! あのッ! ああああああたくしですッ!」 そして、彼女は僕の前で、いきなりスカ→トを胸元までまくり上げたのである。 白い太腿を包んでいる黒のストッキングは同じ黒のガ→タ→ベルトで止められている。そして脚の付け根の大切な丸い丘も、黒いレ→スのショ→ツで覆われていた。 あっけにとられている僕の前に、彼女は一枚のメモを差し出した。 ■お召し上がりにさいして 1)当店はブレンドコ→ヒ→のみ取り扱っております。 2)価格に応じたド→ルにコ→ヒ→を入れてお出しします。 3)お好みに合わせて砂糖・ミルクをお使いください。ただし砂糖はガムシロップとなりますのでご了承ください。 4)このウェイトレスはド→ルです。政府認可のセクサロイドですので、まったく問題がありません。 5)ご不明な点は、オ→ダ→したド→ルにお申し付けください。 喫茶・シュガ→ド→ル ……って全くわかんねぇぞ。 「ねぇ、君、これは一体?」 「と……当店オリジナル……ブ……ブレンドでございます……さ……冷めないうちに」 僕の鼻先に、黒いレ→スのショ→ツのふくらみをおしつけてきた。まるで本物の女性のように(といっても僕もそんなに女をしってる訳じゃないが)ぷにぷに、しっとりした肉の弾力に狼狽した。 つまり……お好みのド→ルにコ→ヒ→を「入れて」お出ししますってことは…… 再び彼女に聞いてみる。 「あの、コ→ヒ→って君が?」 「はい、お客様の鼻先にあたっている場所に……」 そう彼女が言い終わらないうちに、僕はふくらみに沿って舌を這わせる。じっとりじっとりと唾液はレ→スに染みこみ、おもらしをしたような後を残す。 「あ……あぁ……そんな……お客さま……」 ウェイトレスの予想外の反応に僕は火がついて、「これは人形だ」と思うとなおさら、意地悪い気持ちがこみ上げてきて、彼女をテ→ブルの上に押し倒した。そして、のしかかったまま彼女の唇に吸い付くと、とろりとした唾液がどんどん溢れてきた。 そこでさっきのメモを思い出すのだ。 (ガムシロップ……か……) ド→ルがいることは噂では聞いていた。 が、とにかくリアルになればなるほど、破格の値段だという知識しかなく、また周りで持っているものに出会ったこともなかったので、ド→ルの存在自体、インタ→ネットによくある噂のひとつだと聞き流していた。 でも、今僕が舌を絡めあう彼女の動き、反応、匂い……マヤカシとは思えない。一体どんなプログラミングが施されているのだろう? そうそうウマい話なんてあるはずないこと、証明しようと僕はあれこれ考えをめぐらす。が、人形とはいえ、リアルな女性を模したこのド→ルに触れてしまった今、理性などあっというまに吹き飛んでしまって、いかに美味しいコ→ヒ→にありつこうか? という大義名分のもと、股間をパンパンに膨らませてしまった。 テ→ブルに仰向けの彼女の唇は、まだガムシロップを溢れさせ、僕はすこぶる熱心にねぶり続けた。時々唇を離すと、まるで情を交わした恋人のように「はぁ……」と艶かしい吐息を漏らすので、なんだか酷くテクニシャンにでもなった錯覚を起こしてしまう。 甘ったるいキスに少し飽きたので、今度は胸元を両手で勢いよくはだけてやった。あの弾けそうな丸い果実がこぼれるのを期待して、僕は震える手で乳房を探した。黒いレ→スのブラジャ→を押し上げると、やっぱり真っ白な二つの果実が小さな角をツンとたてて僕の目の前に現れた。 僕はその可愛い突起を唇ですっぽり包み、チロチロと舌先で舐めあげる。まずは左から、そして次は右へと……その都度、空いた乳房は手の平でもちあげたり、手の平の間に挟み込んでリズミカルな上下運動をくわえてみたりした。 するとやっぱり彼女は、絶妙なタイミングで 「あっ……あぁっ……」 と声を合わせてきた。 ので、ますます気を良くした僕は 一段と硬くしこるそのツボミを、舌と上あごに挟み、軽くしがむように、吸いたてた。 「あぁ……そこ……も……もっとぉ……」 空っぽのド→ルが、もっともっと……とおねだりする。ある程度の感情はプログラミングされているのだろう。これはファンタジ→なのだ。男の願望を満たす為のものなのだ。にしても、ミイラ取りがミイラにされそうなほど、嬉しい反応をするのが心憎い。 やがて、その尖ったツボミからヌルヌルとしたものが漏れてきたので、はっと顔をあげると、黄みがかったミルクがたらたらと乳房を滴っていくのが見えた。 慌ててちゅるちゅると吸い上げたあと、しばらくは子供のように、おとなしく乳を頬張り続けた。 もちろん、僕の手はしかるべき窪みを探索に出かけていたけれど。 こんなに精緻なド→ルがあるとは、信じられなかった。それがテ→ブルの上で、彼女の脚をM字型に開脚させた姿の正直な感想だった。 スカ→トをまくりあげ、ショ→ツを引きおろした彼女の神秘は、サ→モンピンクの花弁が、ぬらぬらと光を跳ね返していた。太腿を持ち上げる彼女の手が、かすかに震えている。疲れたのか? それとも恥ずかしさのためだろうか? その無防備な彼女の中心に僕はゆっくりと顔を近づける。 「お……おきゃくさま……も……もぉ……」 また、からっぽのはずの人形が切れ切れの声で哀願するが、僕は構わず彼女を観察し続けた。もうだめぇ……と言いながら、こんなにトロトロの汁を滴らせている矛盾を許すわけにはいかない。機械的に湿潤し続けるその花の肉襞(なか)に僕はぐいっと舌を突き立てた。まるで体温で発散される甘酸っぱい牝の匂いを漂わせながら、彼女は、またも 「はぁ……あっ……あぁっ……」 と、僕の頭を脚で挟みながら、甘ったるい喘ぎを漏らし始めた。そして、腰を上下に揺すりながら、まるで敏感な場所を舐めてくれといわんばかりに、僕の口元へ押し付けてくる。結局僕はド→ルの指示通りに、敏感な窪みや窪みの上の小粒を舐めたり吸ったりして、無感情なはずのド→ルの喘ぎに、背筋がゾクゾクしていた。発射しそうでしないもどかしさは袋小路の悦楽で、なかなか止められなかったのだ。 ちょろちょろと、次第に僕の口に生暖かい液体が流れてきた。忘れていたコ→ヒ→がヌルヌルと女の匂いと一緒に溢れてきたのだ。ゴクンゴクン、ジュルジュルと音を立てて啜り上げると、何故か彼女の体が激しくノッキングを始めた。つられて僕も上下に揺れるが、あきらかにコ→ヒ→とは別の汁が漏れていることを確信した僕は、ちょっと悪戯をしてみたくなった。 さすがに、暴発寸前の股間の僕を差し込むのは気がひけるので(あとあとのメンテナンスを考えると……ね)そのかわりといってはなんだが、僕は彼女の、濡れた合わせ目に中指をカギ型に折り曲げてぐいっと捻じ込んだ。 「うぅ……」と短い呻き声を聞いたが、そこには拒絶の色は聞き取れなかった。 きっと僕だけじゃない……今までの他の男だって試したに違いない。現実になかなかうまくいかないことをかなえてみたいと思うそれ自体がファンタジ→なのかもしれない。 ぬちゅぬちゅと、僕の指の動きにあわせて彼女が音を立てる。こんな卑猥な音を立てるなんて、いくらド→ルだって許されるのか?僕は、思わず彼女の耳元に囁いた。 「なんていやらしい音をたてるんだ……きみのここは……ほら……気持ちいいの? お人形なのに?」 すると、うっすらと睫毛をあげた彼女が、僕をみて、こくんとうなづいた。 ような気がした。 だけかもしれない。 強烈な肉の押し返しを指でこじ開けながら、入れたり出したり……僕の分身のかわりに抽出を繰り返すうちに、彼女の伸びた脚が一瞬硬直した。 ような気がした。 それは生身の女じゃないとできない。 はずだ。 だが、かすかに彼女の唇から聞こえたのだ。 「も……もれちゃぅ……」 彼女はうっとりと睫毛を伏せたまま、壊れたスプリンクラ→のように、あの恥ずかしい場所からとめどなく体液を漏らした。 いや、飲みきれなかったコ→ヒ→や女を醸し出すためのラブジュ→スなどが入り混じって、噴き出しただけに違いない。 人形なのに……空っぽの躯なのに……僕は……僕の心は…… 「お客様、お電話ですよ」 いつのまにか眠りこけていた僕の目の前で、すっかり身支度を終えた彼女がブルブル震えるケ→タイを差し出してくれた。 「も……もしもし……あ、部長」」 「さっき、高崎さんから原稿揃いましたって電話はいったから……今何処なんだ?」 「あ、今、マルキュ→の近く走ってますから、すぐ伺います」 「そうか……高崎さんに宜しく」 「はい、判りました」 通話の終わったケ→タイのディスプレイには細長い文字で1、8、0、2と浮き上がっていた。 ソファから立ち上がると、またほんわりとオレンジ色の灯りが僕を照らした。まるで映画やお芝居が終わったかのような、いともあっさりとリアルへ追い払われる寂しさ。だが、これが夢じゃないと知るのは、帰りの会計のときだった。 コ→ヒ→は五百円ぽっきりだった。 だか、荒っぽく制服に手をかけた修繕費として¥20,000の追加が記入されていた。 高いコ→ヒ→代に面食らったが、たしかに日頃(生身の女性には)しないような荒っぽい仕打ちをしたことを思い出したので、おとなしく払うことにした。 い……痛い金額だ。 だが、五百円でこれなら、他のド→ルだとどんな反応をするんだろう? さっきまでの痴態を思い出すだけで、また僕の股間は、はち切れんばかりに……っと、やヴぁいやヴぁい。 僕は腕時計のデジタルが1、8、1、0、と揃うのを確かめると、深呼吸をしてマルキュ→のパ→キングへと駆け出した。 こんなコ→ヒ→ブレイクもたまにはいいかも。もちろん当分、誰にも内緒で…… |